なんかふと思い浮かんだから、書いてみようかな・・・。
— りょう (@ogataryo) 2014, 9月 29
↑そんなわけで、ツラツラと。
こんばんは、りょうです。
【第0回】短編小説の集いのお知らせと募集要項 - Novel Cluster 's on the Star!
企画を知ってから、参加しようかどうか悩んでいたのですが、みなさんがやっているのを読んで、恐れ多くも自分もやってみたいなんて血迷ったことを思ってしまったので、モソモソと書いてみました・・・。
初心者枠ということで、どうかひとつ。
相変わらず長文が苦手なので、短めです。
《 光とともに 》
「だからね、別に見捨てられたとか、そういうことじゃないからーーー」
そう語る上官の言葉は、それぞれの思いに浸る二人の耳には届いていなかった。
前々から仲間内で話題になっていたので、なんとなく覚悟はしていた。
組織的に考えても、どだい無理な望みであることは、二人も、ここにはいないもう一人も、そして、実質は三人を置いていくことになった彼女自身もわかっていた。
それでも、願わずにはいられなかったのだ。
彼女は、陳腐な表現をしてしまえば、カリスマだった。
人格者というわけでもなく、模範生でもなく、素晴らしい成績を上げるわけでもない。
それでも、三人の心を掴んで離さない何かを言葉で表すとしたら、その表現しか思いつかなかった。
彼女の光に吸い寄せられるように集った三人は、互いに切磋琢磨しながら、レベルを上げ、彼女の力になることを望んでいたが、三人の力も、彼女自身の力も及ばず、数年前に一度解散することとなった。
それでも、またいつか彼女の下へ集えることを信じて、ここまでやってきたはずだったが・・・。
「まぁ、仕方ないよね」
タバコをぷかりとふかしながら、チィがポツリと呟いた。
「覚悟はしてたしね・・・」
チィが吐き出した煙をぼんやりと眺めながら、ユゥが呟く。
いつもはかしましくお喋りを楽しんでいる二人も、さすがに騒ぐ気にはなれなかった。
「どうしようかねぇ」
「どうするも何も、今まで通り、やることをやるだけなんじゃない?」
「それはそうだけどーーー」
二人の会話を遮るように、チィの携帯が鳴った。
軽く目配せしてメールを確認すると、
「ヤバイ、呼び出しだ。ごめんね」
とだけ言い残して、タバコを加えながら灰皿を持って出て行ってしまった。
後に残されたユゥは、深いため息を一つ吐き、タバコも酒も飲めない自分を呪った。
こんな時は、タバコをくゆらせながら、思う存分飲み明かしたいところなのに。
「三人には申し訳ないけど、私、ミィを連れてここを出ることになったから」
本当は三人揃ってる時に伝えたかったけどーーーと、ここにいない一人を気遣うセリフの後に、彼女はそう続けた。
まさか、という思いと、やっぱり、という思いが交錯して、二人はすぐに言葉を発することができなかった。
「今の状況を考えても、私の力を考えても、どうしてもあなたたちを連れて行くことはできなかったの。あなたたちにはここに残って、ここを守っていて欲しい」
彼女は、もう決意した瞳をしていた。
彼女の選択が正しいということは、誰からみても明らかだと思った。
彼女を慕って力をつけたきた三人は、いつしかここにはなくてはならない戦力になっていたし、そうなることをまた、望んでもいた。
「あなたたちは、もう私なしでもやっていけるから」
ーーー他の人から聞かされる前に、私自身の口から伝えたかったの。
それだけ言うと、彼女は優しく微笑んで、
「それじゃあね」
と言って出て行ってしまった。
クールな彼女らしい去り方だったな、とお酒の代わりに熱いコーヒーをすすりながら、ユゥは思った。
じんわりと、喉が焼けた。
誰にも媚びず、自分を崩さず、常に前を向いている、前しか見ていない彼女が、ユゥは好きだった。
もう、彼女には自分は必要ないということを自覚しながらも、彼女に依存し、なんとか自分を保っていたことを、改めて思い知らされた。
彼女と一緒に出て行くミィに、猛烈に嫉妬していることも。
「あっちぃ・・・」
いきなり放り出されたような寒々とした思いと、彼女自身に向けた羨望と、燃えるような激しい嫉妬と、いろんな思いを振り切るように、一気にコーヒーを飲もうとして、失敗した。
後には、灼ける思いだけが残った。
翌日、昨日はいなかったクゥも改めて話を聞かされ、初めて三人が揃った。
言葉もなくタバコをふかす二人と、それを眺めるユゥ。
重たい沈黙の中、煙だけがフワフワと虚空を漂っていた。
「いっそ、クゥが先頭に立って出て行けばいいんだよ」
沈黙に耐えかねて、変に明るい口調でユゥが言った。
「いやいや、それこそ、ユゥの方が適任だよ」
「どっちが先頭でも、私、ついて行くよ!」
そんなことは本望ではないことは、三人ともわかっていた。
光を失ってしまった三人は、また新たな光を見つけなければならなかった。
「器じゃないよなぁ・・・」
ため息まじりに呟いて空を仰いでも、煙で霞んだ空しか見えなかった。
「ユゥだったら、できると思うけどなぁ」
というチィの声は、聞かなかったことにした。
落ち込もうと、絶望しようと、朝はやってくるし、やらなければならないことは山のように積み上がっていた。
いっそのこと全てのことから逃避したいと思いながらも、目の前の雑務を黙々とこなしてるうちに時はどんどんと過ぎ去って行く。
そのうち、彼女を失った穴も、何かで埋まるのかもしれない。
キズがいつかは塞がるように、穴もいつしか埋まるのかもしれない。
ある時、クゥに呼び出されて、久しぶりに三人が集まった。
毎日顔を合わすけど、タバコを吸わないユゥがここに来ることは稀で、三人だけで集まることはなかった。
「あのさ、煮たりんご、好き?」
クゥが持っていた容器の蓋をあけると、そこには煮りんごがたくさん入っていた。
クゥの差し入れは、いつも変わったものばかりだ。
前回は、キュウリのぬか漬けだったんだ。
そう思うと、なんだかおかしかった。
「良かったら、食べて」
促されて、二人は煮りんごをチョンとつまんで、ぽいっと口の中に放り投げた。
りんごの甘みと爽やかな酸味が口の中に広がった。
三人は、夢中で煮りんごを食べた。
「おいしいねぇ・・・」
久しぶりに三人で笑いあって、そして、少しだけ泣いた。
「彼女は元気かねぇ?」
食後の一服をする2人を背にして、大きくノビをしながらひとりごちた。
「元気なんじゃない?」
「彼女のことだから、あっちでもまた、上官と戦ってるんじゃない?」
しっかり聞こえていたらしく、クゥとチィが応えた。
上官と戦う彼女を想像して、また三人で笑った。
いつか彼女と会うことがあれば、その時の自分はどうなっているだろう。
今日もきっと戦っている彼女に、恥じない自分でいたいと思う。
そのためにどうしたらいいかなんて、まだわからないけれど、とにかく前を向いて、自分にできることをやって行こう。
大きな光がなくっても、足元を照らす小さな光があれば、歩いて行ける。
そうしているうちに、自分自身が大きな光になる日も、もしかしたらやって来るのかもしれない。
「ごちそうさまでした」
煮りんごを食べ終えた三人は、またそれぞれの場所へと、歩いて行った。
《 了 》
りんご、りんご、りんご・・・
りんご・・・かもしれない(パクり)
— りょう (@ogataryo) 2014, 9月 29
↑りんごのとってつけた感が凄まじい。